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座談会

平和に暮らせる社会

激しく変化する社会情勢、議論がすすむ憲法改正。
平和で持続可能な社会を実現するために教育は何ができるか?それを支える政治の役割とは?
教室で多様な子どもたちと日々を過ごす教職員とともに考えます。

  • Yさん 小学校教員

    Yさん小学校教員

  • Iさん 中学校教員

    Iさん中学校教員(社会科)

憲法理念と平和・人権について

水岡俊一

憲法改悪の可能性が高まっていますが、あまり危機感はないですよね。政治家は、改正について普段から考えているため、手続き論的な話に目がいきがちです。例えば、改正には国民投票が必要なので、その前にいつ国会で発議することが想定されるかなど。憲法が変わったらどうなるのか、憲法は私たちの生活にどう関わるかを、国会での議論を通じて、みなさんと共有していかなければならないと考えています。

Yさん 小学校教員男性

小学校の教員をしています。平和という視点では、今、学校現場では当たり前のように「戦争は悲惨だ」と教えています。目の前の子どもたちを戦場に送りたいと思う人は誰一人いません。ただ、それと憲法のつながりを意識している人は少ないように思います。

Iさん 中学校教員

中学校の社会科の教員です。中3の公民では「憲法・立憲主義とは何か」を子どもたちと考えてきました。憲法の全文を読んで、一番大切だと思う条文を選ぶという実践をしたことがあります。そうすると、子どもたちの間で自然と議論が始まるんです。「平和が大事だと思う」という感想が出ると、「思うだけでは実現できないから、戦争放棄をうたう9条は大事だね」、「9条を守るためには投票は行った方がいいよね」、と思考がつながっていくのです。教員が意気込んで語りすぎなくても、子どもたちは自ら気付きます。

水岡俊一

その授業はワクワクしますね。憲法改正の議論には、立憲主義の考え方が不可欠です。立憲主義とは、国民の権利を守るために権力を制限する憲法によって政治を進めていこうという考え方です。この前提を踏まえない改正の議論には危機感を持つべきです。私が恐れるのは、考える間もなく改正が進むことです。そこに待ったをかけることが、今の政治に求められていると感じています。

Yさん 小学校教員男性

私は憲法の「基本的人権の尊重」も大事にしています。今、マイノリティーの人権に関する様々な課題が出てきています。例えば、クラスの中にLGBTの子が何人かいるはずにもかかわらず、結局、何をしたらいいかわからず、「配慮しよう」で終わっているのではないかと感じています。

水岡俊一

日本はマイノリティーの人権が十分に保障されていない社会です。憲法25条などに基づき、そうした人の人権をどう捉えるのかは国際社会からも問われていると言えます。マイノリティーと言えば今、外国にルーツのある子どもが増えていますが、学校現場では対応できていますか?

Iさん 中学校教員

日本語がまったく話せない子どもが入学してきた時、「テストはどうしよう、教科書はどうしよう」と、一つひとつ試行錯誤しながら向き合っています。支援員の配置などのサポートが十分にあればすべての子どもたちが輝けると思います。

水岡俊一

外国人労働者はこれからさらに増えるでしょう。その方々が家族を連れてきた時、家族の生活や人権をどう守るのか。そのことを念頭に法整備を進めていくべきだと考えています。こうした施策は、自治体任せの部分が多いのが実情です。 しかし本来は、受け入れ政策をとった国が、責任を持って対応すべきです。少数派の人たちや様々な意味で困難な状況に置かれている人たちの立場で政治を進めていかなければならないと思っています。

原子力発電所とエネルギー政策について

Iさん 中学校教員

原子力発電所のある県には、原発関係の仕事に就いている方がたくさんいます。保護者も例外ではありません。そうした中で、子どもたちとともに原子力政策について考え、語り合うことには難しさを感じました。

水岡俊一

私は原発については廃炉をめざし、原発ゼロを実現するべきという考えを持っていますが、働く方の生活をどう守るかは重要な視点だと思います。国策として原発を利用してきた日本が、国としてこれからどうするか問われています。この問題を考えるにあたっては、「持続可能」という言葉がヒントになると思っています。

Yさん 小学校教員男性

原発について子どもたちと考える際、「持続可能」という視点を持つといいということですね。

水岡俊一

原発の廃止を訴えるのは簡単ですが、それだけではなくて、例えば、廃炉のためには多くの人員が必要だというところに注目すべきです。日本が世界に先駆けて廃炉技術を確立するという方向性を政治が打ち出せば、やりがいも生きがいもある仕事を作れると思います。自然エネルギーの研究・開発をさらに進めるための投資もより積極的にしていくべきです。

持続可能な社会の実現に向けて

水岡俊一

先ほどの「持続可能」という言葉は、最近よく聞かれるようになった「SDGs(持続可能な開発目標)」に基づくものです。SDGsには働き方に関する目標も含まれており、教職員の長時間労働の問題にも重要な示唆を与えてくれます。過労死ラインを超えて働く教員が、小学校で3割、中学校で6割を超えている学校現場は持続可能とは言えません。

Yさん 小学校教員男性

「自分は時間を気にせずとことんやりたいんだ」という教職員は少なくありません。その意味で、働き方の議論は難しいのですが、「持続可能」という視点で考えることで、「あなたはいいかもしれないけれど次の世代が同じことを求められたら難しいよね」と議論が始められると思うのです。

Iさん 中学校教員

中学校の社会科では「持続可能」という言葉を地理や公民で学びます。痛感するのは、子どもたちよりおとなの問題意識が低いということです。原発もそうですが、今起こっている問題が、子どもたちの未来につながっているのだという意識を、私たちおとなが持たなければならないと思います。

Yさん 小学校教員男性

先ほど性的マイノリティーの話がありましたが、なかなか自分を表現できない状況があると思います。共生社会には、すべての人に安心できる場が必要でしょう。子どもたちには、「教室は間違うところ、間違ってもいいところ」だと伝えています。教職員は、安心できる場をつくるために頑張っていますが、時間をかけているうちに、学習指導要領の内容を教えるのが遅れていきます。続けていくためには、おとなにも子どもにもゆとりが必要だと思います。

水岡俊一

「持続可能」という視点は、あらゆる分野の議論に当てはめることができます。利害関係がある人もない人も、同じテーブルで議論できる。これこそが民主主義社会の基盤です。将来日本を背負う子どもたちがそうした力を身につけられるのは学校です。そのためにもう一度国会に戻ることを実現し、学校が持続可能な職場となるよう、しっかりと訴えることが私の役割だと考えています。

座談会を終えて・・・

Yさん 小学校教員男性

持続可能という視点で未来を考える姿勢に共感しました。今日のキーワードは水岡さんの仰った「持続可能」という視点だと思います。様々な立場の方が合意形成するにあたって、「持続可能か」と問い合うことが非常に大事だと改めて確認できました。私たちも学校現場でこの視点を生かしていきたいと思います。

Iさん 中学校教員

現場の声をしっかり聞き届けてくれると安心できました。教員出身の水岡さんだからこそ、学校現場の実態をよく理解していただき、すごく安心感がありました。現場の声をしっかりと政治に反映してくださると信じています。子どもたちのために、私たちおとなが考え、議論を続けていきたいと思います。